1 運用目的
日本弁護士国民年金基金(以下「当基金」という。)は、当基金が支払い義務を負う給付及び交付義務を負う交付金に係る年金資産を将来にわたって確実に確保するため、必要とされる運用の総合収益をあげることを目指す。
2 運用目標
資産全体としては、将来にわたって健全な年金制度を維持するのに足りるだけの収益率を確保することを、長期的な目標とする。
投資対象資産種別(以下「資産科目」という。)については、その各々の市場における収益率(以下「ベンチマーク」という。)を上回ることを目標とする。
3 資産構成
(1)投資対象資産
@ 基本となる投資対象資産は、国内債券、国内株式、外貨建債券、外貨建株式及び短期金融資産とする。
短期金融資産は、余裕資金として位置づけ、可能な限り国内債券、国内株式、外貨建債券及び外貨建株式の投資に努めるものとする。なお、転換社債については、独立した資産としてではなく、国内債券又は国内株式の代替資産として取扱うこととする。
A 上記の基本となる投資対象資産以外のいわゆる代替的(オールタナティブ)な投資対象資産への投資については、理事会においてリスク・リターンの特性、流動性、評価方法等の検討により、投資方針が策定され、投資対象として適切であるという承認を得られたときは、実施することができる。
なお、長期的資産構成割合に位置づけるに至らない場合は、その資産割合の上限を投資方針に定めるものとする。
(2)長期的資産構成割合(基本ポートフォリオ)
長期的な年金資産の運用目標を達成するため、基本となる投資対象資産の期待収益率の予測に加え標準偏差と相関係数を考慮した上で、将来にわたる最適な組み合わせである長期的資産構成割合(基本ポートフォリオ)を策定し、これに基づく資産配分を運用の基本とするよう努めるものとする。
この長期的資産構成割合は、資産運用委員会の意見を聞いて、理事会で決定する。
なお、長期的資産構成割合は、国民年金基金の年金制度の財政再計算の際に見直すことを原則とする。
(3)運用受託機関別の資産構成
当基金は、各運用受託機関が当基金の資産運用を行う際の基準とする資産構成について協議し、運用受託機関に対して、個別に運用指針により提示する。
なお、生命保険会社の特別勘定特約の資産構成については、生命保険会社より運用方針の提示を求め、その方法が基本方針に適合することを確認するものとする。
4 運用受託機関の選任及び運用委託割合に関する事項
(1)運用受託機関の選任
運用受託機関の選任は、長期的資産構成割合に基づき、各運用受託機関の特色、過去の運用実績、国民年金基金制度に対する理解と関心等を総合的に評価し、最も適切な運用受託機関を選任する。
運用受託機関は、各運用受託機関の@経営理念、経営内容及び社会的評価、A国民年金基金制度に対する理解と関心、B運用方針及び運用スタイル・手法、C情報収集システムや投資判断プロセス等運用管理体制、D法令遵守体制、E運用担当者の能力及び経験、F年金運用の経験と中期的な実績等を十分に審査して具体的に選任する。
(2)運用委託割合の変更
運用委託割合は、6に定める定量及び定性的な運用評価と、運用受託機関の経営内容及び社会的評価等を加味した総合的な評価に基づき、変更を行うものとする。
運用委託割合の変更は、その変更に先立つ3年程度の評価期間の実績をもとに行うことを原則とする。但し、運用受託機関に、次の事由が生じた場合は、直ちに運用委託割合の変更、契約の解除等を行うことがある。
@ 運用の成績が著しく不良である場合や、運用受託機関の運用スタイル又は手法が従前のものから大きく変更される場合
A 市場価格の大幅な変更により、当基金全体の資産構成が長期的資産構成割合から著しく乖離し、運用委託割合の調整により資産配分の乖離を調整する必要が生じた場合、または運用スタイル・手法の適正な分散を目的として運用受託機関の構成の変更を行う場合
B 契約書、基本方針、運用指針等に反したと認められる場合又は運用受託機関の経営内容や社会的評価の悪化等、当基金の資産管理上重大な問題が生じた場合
5 運用報告
(1)報告書
当基金は、運用受託機関から残高状況、損益状況、取引状況、費用状況等に係る年金資産の管理に関する報告書並びにパフォーマンス状況、ポートフォリオ状況、運用方針等に係る年金資産の運用に関する報告書を、原則として四半期ごとに提出させるものとする。また、当基金は、必要に応じて、運用受託機関に対し定期的な報告書を提出することを運用指針で指示するものとする。
(2)ミーティング
当基金と運用受託機関は、定期的に年金資産の運用に関しミーティングを行い、運用に関する重要事項について協議を行う。
(3)その他の報告又は協議
当基金は、運用環境の急激な変動、運用受託機関の運用スタイル・手法の変更、運用成績の急激な悪化等年金資産の運用に関して重大な変化があった場合には、直ちに運用受託機関と協議を行い、必要な指示をするものとする。
6 運用成績の評価
運用受託機関の運用に関する評価は、以下の定量評価に定性評価を加えた総合的な評価によって行うものとする。
(1) 定量評価
(ア)資産科目ごとの評価
資産科目ごとの評価は、時間加重収益率をベンチマークと比較することによって行う。
また、運用受託機関相互には、同一のベンチマークを対象とする運用機関ごとに比較評価を行う。
(イ)複数資産の資産配分能力の評価
複数資産科目間の戦術的資産配分の判断が委任されている運用受託機関の評価については、資産全体の時間加重収益率と複合ベンチマーク(資産科目ごとのベンチマークを運用指針に明記された基本となる資産配分比で組み合わせた収益率)とを比較することによって行う。
また、同一種類の資産の組合せを委託している運用受託機関ごとに、運用受託機関相互の資産配分能力の比較評価を行う。
(ウ)ベンチマークは次のものを用いる。
@ 国内債券・・NOMURAボンドパフォーマンスインデックス(総合)
A 国内株式・・東証株価指数(TOPIX、配当込み)
B 外貨建債券・・シティグループ世界国債インデックス(日本除く。円換算)
C 外貨建株式・・MSCI−KOKUSAIインデックス(円換算・配当再投資・グロス)
短期金融資産は、余裕資金として定量評価の対象外とするが、必要最小限にとどめているか等管理運用状況を定性評価する。
なお、運用受託機関の運用スタイル・手法からみて合理的理由がある場合は、上記以外のベンチマークを用いることとし、その旨を運用指針に明記するものとする。
(2)定性評価
各運用受託機関の組織、投資方針、リスク管理、運用能力、プレゼンテーション等に関する評価を行うこととし、その際、運用スタイル・手法と実際の投資行動との整合性についても考慮する。
7 運用業務に関し遵守すべき事項
(1)一般事項
(ア)合同運用を原則とすること。合同運用においては、運用目的が明確なファンドのみを運用対象とすること。ただし、当基金が合意した場合には単独運用によることができること。
(イ)流動性が低いという理由だけで、投資対象から除く必要はないものであること。
(ウ)余裕資金は必要最小限とし、その管理は明確に把握できるように区分して行うこと。
(エ)有価証券の高い売買回転率による取引コストの増大により、収益率をかえって低くするような事態は避けること。
運用受託機関の有価証券の売買執行が当基金にとって最良な執行となるよう、運用受託機関の管理に努めること。
(オ)運用受託機関に対して、資産区分ごとの運用方針及びそれに基づく運用スタイル ・手法を明らかにさせ、これを変更する場合は、その旨を当基金に文書で通知させ、協議を行うこと。
(カ)運用受託機関に対して、法令遵守確保のための体制の整備に努めさせること。
(2)個別事項
運用受託機関に対する遵守事項は、必要に応じて運用指針により各運用受託機関ごとに提示する。
8 資産運用委員会
当基金の資産運用に関して、基本方針、長期的資産構成割合の策定及び改定等重要事項について必要な調査・研究をするために、資産運用委員会を設置する。
委員会の設置要綱は、別途定める。
9 資産管理機関の選任等
資産管理機関を選任する場合は、前記「4 資産運用受託機関の選任及び運用委託割合に関する事項」を準用する。
資産管理機関からの報告については、前記「5 運用報告」を準用する。
附 則
この基本方針は、平成13年4月1日から適用する。 |