備えあれば憂いなし!
千葉県弁護士会会員 大久保佳織
 私がこの原稿の執筆の依頼をされたのは、千葉県弁護士会で日本弁護士国民年金基金に加入している弁護士のうち一番若いからという理由でした(新入会員を除く)。テーマは自由で、趣味でもなんでもかまわないと言われて考えましたが、私はこれといった趣味も誇れるものもなく、何を書けばいいのかと悩みました。そして、母親に私のおすすめは何かと尋ねたところ、母親は考えた末「うーん。強いていえば家計簿をつけ続けていることかな。」と。

 私は小学生のころ母親に勧められたことがきっかけで、おこづかい帳をつけ始めました。ただキティちゃんのおこづかい帳がほしかっただけという気もしますが…。きっかけはともあれ、小遣いといっても小学生のころの小遣いは学年かける100円。微々たる額ですが、もらった小遣いで流行りのキャラクターのメモ帳と消しゴムを買うにはあとどのくらい必要かと少ないながらも一生懸命考えたものです。もちろん親にお願いして買ってもらうこともあったのですが、自分のお金で買うものは許可もいらず、全然実用的ではない好きなものを買えるのがうれしかった記憶があります。この習慣は小遣いを親からもらっていた中学生・高校生の間も続けてきました。
 そして、私は大学生になってアルバイトを始めました。おこづかいとは別に初めて自分で大きな単位のお金が稼げるようになったので、月ごとの予算を立て、それに沿ってアルバイトのシフト希望を入れ、お給料を使うようにしてきました。ただのおこづかい帳から家計簿にランクアップさせたのもアルバイトを始めたこの時期だったと思います。私は大学では学生オーケストラに所属していたのですが、毎月の活動費も高く、演奏会ごとにチケットノルマもあったので、金銭的には常にキツい状況でした。しかし、毎月家計簿をつけていたおかげで、その当時の私にとっては(現在もですが)高額な30万円もするバイオリンを自分のアルバイト代だけで購入することができたのです。このようにきちんと管理していたことが評価されたのか、サークルでは会計を任されたため、私は「いつお金払うの?給料日は今週って言ってたでしょ。」「計画的に使えば今ここで2万くらい出したって平気だよ。今月中はなんとか乗り切りなさい!」「早く払わないと利息付けるよ!!」などと後輩に恐れられるくらい厳しい取り立てを実施し、予算どおりにオーケストラを運営することができました(笑)。

 私は何度か日記をつけようと思い、日記帳を買ってみたり、三年日記に挑戦したこともあります。しかし結局続かず、三年日記は一年目で断念しました。ただ、家計簿だけは不思議と今まで面倒くさいと思ったこともなく、ずっと続けることができました。私は3,4年前から昨年までの家計簿はまだ捨てずに保管しているのですが、その家計簿を見れば、当時どういう生活をしており、どこに旅行に行ったのか、何によくお金を使っていたのかが一目瞭然でわかります。私にとっては家計簿が日記帳の役目を果たしており、趣味というわけではないのですが、唯一継続してきたやめられないものなのです。これさえあれば、私は計画的に暮らしていけるような気もしてきますし、多少高額な買い物をしても、「計画的にやってきたんだから大丈夫。」と自分自身に対する言い訳もできるのです。

 弁護士になった今でも、この習慣は継続しています。そのおかげで、昔からの金銭感覚は変わりませんし、仕事を始めてからは逆に給与制ではない自営業ということで、もっと計画的にお金を使おうという気持ちになります。
 事務所に送られてきた日本弁護士国民年金基金のパンフレットに興味を持ったのも、このような気持ちからかもしれません。事務所の先輩弁護士に加入したほうがよいか聞いてみたところ、「若いうちに加入しておいたほうが掛け金も安くて済むし、基礎年金だけでは将来不安だと思う。」というアドバイスをいただき、加入することを決めました。今まで、家計簿をつけながら、貯められるときには貯めようという感覚でいたので、特に損することもなく将来につなげられる年金基金に、若ければ若いほど安い掛け金で加入できるというのは魅力的でした。

 若いうちからそんなこと気にしなくても…という方もいらっしゃるかと思いますが、いつどこで何が起こるかわかりません。実際私たちの同期や後輩の中には、体調を崩して仕事を休んだり、就職先すら見つけるのに苦労している人たちもいます。私は今余裕のあるこのときに、家計簿をつけることと日本弁護士国民年金に加入することをおすすめします!
 備えあれば憂いなし!!

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陽だまり No.36  `10.6より