老後を考えたわけでなく
第二東京弁護士会会員 葉山 水樹
バブル崩壊が始まった!
 私は1991年1月、日弁連事務次長に就任しました。当時の中坊公平日弁連会長のもと、菅原一郎日弁連副会長(のち、当日本弁護士国民年金基金の初代理事長)と梶谷剛日弁連事務次長が、弁護士国民年金基金の認可・設立の担当責任者として奔走しているときでした。
 この基金の認可・設立にあたって、関係機関からの天下りを阻止することと、加入者を一定数確保することが大きな課題で、梶谷次長が大変苦悩されていたことを今でも鮮明に覚えています。関係者のご努力により、これらの課題を克服し、弁護士国民年金基金は同年8月に認可・設立の運びとなりましたが、すでにバブル崩壊が始まっていました。何としても、加入者の飛躍的増加が求められていました。

基礎年金に加入していなかった!
 私は、幼い頃、戦時国債が戦後のインフレーションによって紙屑同然となったことを両親から聞かされていましたので、国の施策については信じることができませんでした。国民年金についても同様の考えで加入しませんでした。
 ご存知のように、国民年金基金に加入するには基礎年金である国民年金の保険料を納付していなければなりません。他人に基金加入を勧誘するのに自分が加入していなければ何の説得力もありません。しかし、私は当時55歳で、その年から始めて60歳までの残加入期間中に保険料を納め続けても、納付年数の不足で老齢基礎年金を受けることはできず、納付保険料は単に無駄になってしまうということが判っていました。自分にとって年金基金に加入するメリットがあるのか、疑問でした。

節税効果があった!
 日弁連は東洋信託銀行を当基金の年金資産運用の総幹事会社とすることに内定し、設立準備にあたって同銀行の助力を受けることとなり、その打ち合わせのため、同銀行の担当者であった高橋高男部長と、よくお会いするようになりました。
 高橋さんから国民年金基金加入のメリットを聞いているうちに、基金の掛金は1年分前納すると11カ月分相当の金額で済むこと(現在は0.35カ月分の割引率だそうですが)、支払い掛金は全額が税務申告上、所得控除されること、受給のあてのない国民年金の保険料を支払っても、当時の私の収入で50万円ほどの節税効果があることが判明し、直ちに基金に加入することに決定しました。節税しながら、老後のための貯金をするようなものですから。

専従配偶者の掛金控除もあった!
 こうして基金に加入してから、しばらくして後、日弁連法務研究財団の会員勧誘のためブロック大会に出席した折、弁護士国民年金基金からも加入者の勧誘のため出席していた当時の鈴木永章事務局長から、専従配偶者の掛金も控除の対象となることを聞き、直ちに青色申告の専従者である妻を加入させました。
 もっと早く基金のパンフレットをちゃんと読んでいたら、節税にもなり、妻の老後も多少豊かになったであろうと後悔しました。

寿命まで延びるとのこと
 そして私は昨年、65歳となり、弁護士国民年金基金の受給者となりました。基金の蟹沢桃子女史からその旨伝えられた時、「もう老人扱いするのですか」と嫌みを言いましたところ、同女史から「これからは今までのようにお酒をガブガブ飲まず健康に留意してください。基金受給者は皆さん健康で長命です。何しろ亡くなるまで受給できるのですから」とのことでした。
 数ある職能型基金のうちには加入者の減少を懸念するところもあるかも知れませんが、弁護士と弁護士業務補助者の人口が今後とも飛躍的に増大してゆくことが確実な当基金の将来は、間違いなく明るいと思います。万一、基礎年金保険料を納めていなかった人や私のように残期間分が「掛け捨て」となってしまう人も、ご夫妻お揃いの節税貯金をするつもりで、ぜひ、弁護士国民年金基金にご加入ください。
 何しろ、健康な老後を送り、寿命まで延びるそうですから。

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陽だまり No.20  `02.5より