弁護士国民年金基金活動を通じて思う弁護士の未来
札幌弁護士会会員 竹之内洋人

年金基金加入のきっかけ
 弁護士登録時に入所した事務所は、債務整理案件の多い事務所(というと若い会員の方は大量広告をしている事務所を思い浮かべるかもしれないが、そうではない。20数年前は、過払回収は容易でなく、広告も禁止されており、債務整理案件を積極的に集めるという向きは全くなかった。)だった。高齢者の債務整理案件をこなすなかで、国民年金だけでは生活保護以下の生活になってしまうということを目の当たりにした。
 自分の体力・気力は並みの弁護士以下なので、死ぬまで現役ということはないだろう、となると、国民年金を払っているだけでは将来生活できなくなる、ということは、そんなこともあって早くから十分認識していた。しかし他方で、目先の資金需要もあったし、少しは貯金もしたかったし、さらに先送りにしたがる性分が災いして、老後の備えに何がいいかはよく考えようと思っているうちに数年が過ぎた。
 4年が過ぎようとするころ、弁護士国民年金基金の掛金が値上がりするので加入は今のうちにという案内を受けた。ようやく本気で考えた。時間の余裕はなかったので、自分で投資して運用するという選択肢は最初から外した。人に任せるものでは年金基金がベストだと思った。終身なので長生きしても安心だし、受取額は確定しているし、掛金が全額社会保険料控除されるというところが民間保険より断然有利だと考えた。そこで、値上げ前に加入を申し込んだ。
 その後、弁護士を取り巻く状況は年々厳しくなり、将来への不安はつきないが、それでも65歳まで頑張ればそれなりの年金はもらえるというのは、一応の安心材料になっている。

年金基金代議員・理事への就任と勧誘活動
 4年ほど前、北海道弁連枠の年金基金代議員にならないかとのお声がかかり、代議員兼理事に就任することとなった。
 仕事の一つに新規加入者勧誘というのがある。従前から行われていたものとして、道弁連新人研修での説明というのがある。ただ、これは5分しか時間がもらえないので、ごくさわりしか話せないところにもどかしさがある。ただ、多くを占める札幌会の新人に対しては、別途、札弁新人研修の中で15分話すことができるので、こちらを合わせるとそれなりに年金基金加入の必要性とメリットは伝えられているのではと思う。
 とはいえ、自分もそうだったが、遠い先のことよりまずは目先の生活であり、すぐに加入ということにはそうそうならないので、その後の勧誘も必要である。基金事務局からは定期的に勧誘文書が送付されているところである。それに加えて、札幌では、2年前から、相方の代議員である古屋敏彦弁護士のアイデアで、札弁ビアガーデン(夏に弁護士会館の屋上等で行われる親睦行事)に年金基金のブースを出させていただき、年金基金の勧誘費を活用して振る舞い酒をしながら会員のみならず奥様方にもお声がけをしパンフレットを渡すということを始めてみた。その際にアンケートも取っている。それによると、やはり期の若い世代では、まだ老後の備えということに気が回っていない人が多いようである。しかし、のみならず、年金基金に加入する余裕がないという声もある。先に述べたように、それでは老後の生活はおぼつかないのであるが、そこまで手が回らない人が少なからずいるのが現状である。

弁護士の未来のために
 法曹志望者の減少対策として、法科大学院制度をいじるであるとか、弁護士の魅力を若い人に伝えるなどの対策が打ち出されている。しかし私には、そのようなことで志願者が増えるとは思えない。それは法曹志望者減の主たる原因ではないと考えているからである。司法試験に合格できるくらいの能力があれば、弁護士以外にいくらでもより経済的に充実・安定した道を選ぶことができる。私が今の若者だったら、法科大学院に大金をはたかねばならない上に合格の先があまりにも経済的に不安定であるため、いくら弁護士の仕事自体には魅力は感じても、この道は選ばなかったのではと思う。私はお金が全てとは思っていないが、それにしても、今、弁護士業界に飛び込むのはリスキーである。
 弁護士会として、弁護士を普通の職業として成り立たせていけるように、一刻も早く、周辺的な対策ではなく、本質的な手を打っていかねばならないのでないか。このままでは志望者はさらに減少し、質の低下は避けられず、他方で食べるために無茶をする弁護士も増え、ひいては弁護士に対する社会の信頼が低下してしまうのではないかと懸念する。手を打っても効果が出るまでには時間がかかる。手遅れとなるまでに残された時間は多くはないのではないだろうか。

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陽だまり 2019 No.47より