早期加入のすゝめ
高知弁護士会会員 津田 久敬

【加入のきっかけ】
 私が弁護士年金基金の存在を知ったのは,弁護士登録1年目でした。現在弁護士登録12年目で38歳ですので,当時は確か26歳か27歳だったと思います。
 私が弁護士になったころは,今ほどは就職活動も厳しくなく,今よりも将来に対する危機感が少なかったと思います。老後のことなど考えておらず,ただ,目の前の事件に向き合うことで精一杯でした。そのため,「年金基金」に関するパンフレットやポスターを見てもあまり興味を持って見ておりませんでした(というより存在自体を意識していませんでした)。
 当時,私は,神奈川県弁護士会(旧横浜弁護士会)の複数名弁護士がいる事務所でイソ弁として執務をしておりました。その時のボス弁から「君はいくつまで仕事をするつもりだ。」という質問をされたと記憶しております。私は,そんなことを考えたことすらなかったので,はっきりと回答することができませんでした。するとボス弁は「年を取ってから仕事を辞めようと思っても,その時に蓄えがなければ辞められないよ。年金も基礎年金だけでは生活できないでしょ。精神的にも体力的にも本当は仕事を続けられないのに,続けなければならない状況は,依頼者にとっても,君にとっても不幸で,事故(弁護過誤)の原因になるよ。」という指摘を受けました。もちろん年を取ってからでも活躍している先生方はたくさんいます。しかし,いつ自分が仕事を辞めなくてはならない状況になるかわかりません。その時に自分がきれいに幕引きをするためには,老後,仕事をしなくても定期的な収入があることが大前提であることに気付かされました。そして,ボス弁は,弁護士年金基金への加入を勧めてくれたのでした。
 ただ,危機感の低い私は,その時すぐには加入しませんでした。
 私が,実際に加入したのは,高知県の弁護士過疎地域に3年という期限付きで行った後のことでした。自分一人で事務所を経営しながら,その後の自分の身の振り方を考えていく中で,目の前のことだけではなく,老後の生活についても深く考えるようになりました。弁護士過疎地域での仕事は,老人の債務整理案件も多く,その中で,基礎年金のみでは生活できていない方たちの事例を多々見ました。さらに,弁護士が増えていく中で,将来,自分が年を取った後に,若い人たちと同じように活躍できるのかという後ろ向きの気持ちもあったかもしれません。

【加入してみて】
 もうすぐ加入して10年近くになります。今となっては,国民年金と併せて自動的に支払いがなされる弁護士年金基金については,月々の固定経費として認識されているため,その出費を意識することもありません。むしろ,確定申告の際には,所得控除されることから,ありがたい存在ですらあります。
 掛金を自由に決められることも非常にありがたいところです。収入が多い先生方は掛金を上限一杯に掛けている方もいますし,配偶者も一緒に加入している先生方もいらっしゃいます。私は,加入時,弁護士登録3〜4年目でしたので,そこまで多くの口数に加入しておりませんでした。ただ,増やそうと思えば少しずつでも口数を増やせます。何よりも早い段階から少しずつでも加入していたことで,現在の掛金が少しでも減っていることが,私にとって,早期加入の大きなメリットであったと思います。

【若い先生方へ】
 弁護士になったばかりの先生方の中には,基礎年金以上の負担をすること自体厳しいとおっしゃる方もいるかもしれません。しかし,いつまでも体が元気だとは限りません。年を取ってから大きな掛金を負担するよりも,少しずつでもいいので掛金を掛けておくことが将来的な負担の減少になることは頭に入れておいて欲しいところです。
 1口目からでも構わないので加入することをお勧めします。そのうち,収入の増加に伴って,少しずつ口数を増やしていけばよいと思います。また,収入が必ずしも右肩上がりに上がる時代ではありません。そのような場合には,収入に併せて掛金を減らせばいいだけのことです。弁護士として,依頼者に対して将来(老後)の生活設計の相談を受けることも多いと思います。しかし,我々弁護士も厳しい時代になり,今まで以上に,老後に対して強い危機感を持たなくてはならない時代になっています。そして,弁護士年金基金は,そのような中で,先生方にとって,老後の安心のための非常に有効なツールであると思います。

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陽だまり 2017 No.45より