四十にして惑う−年金基金加入から人生設計を考える
第二東京弁護士会会員 鶴森 雄二

1 どうして私が日本弁護士国民年金基金に
 もうすぐ数えで40歳になる。「不惑」と呼ばれる歳である。四十にして惑わず。孔子は40歳であれこれ迷うことがなくなったというが、私自身は40年も生きてきて未だに迷いだらけである。人並みに、家族を持ち、家を持ち、ローンを背負ったが、先のことなど何も考えずに生きてきた。「一瞬一瞬を一生懸命に生きてきた」といえば聞こえがいいが、実際は行き当たりばったりの人生である。この先どう生きていくか。
 不惑を前にして、妻から「老後のこと、ちゃんと考えているの」と問われ、「娘たちに養ってもらう」などと答えて、大目玉を食らう。妻は、夫婦の老後に備えて共通口座に定期の積立をしたり、自身のために個人年金保険に加入したりしている。一方、私の方はどうか。ほぼノープランである。「ちゃんと考えてね」という妻にすすめられて、同業の妻ともに日本弁護士国民年金基金に加入することにした。

2 加入すると決めてはみたものの・・・
 妻が取り寄せてきた申込書類をみると、加入口の型・数はいろいろあり、悩ましいことばかりである。
 1口目は、終身年金のA型とB型から選ばなければならない。A型は掛金納付中または年金受給中(保証期間内)に万が一私が死んでしまっても、妻や娘たちに遺族一時金が支払われる。一方、B型は1万円の一時金しか支払われない。まだ幼い娘二人が独り立ちするには、早くてもあと20年はかかる。両親と同じ職業に就きたいと言い出したら、もっとかかるかもしれない(私自身は完全に独り立ちするのに30近くまでかかってしまった)。健康にはまだ自信があるが、健康診断の結果に若干気になるところがある。万が一ってこともあるから、多少月々の掛金が多くても遺族一時金が出た方がよいか。でも、「万が一」でも「死ぬ可能性がある」と考えるのは嫌なことだ。そう簡単には死ねない。やりたいこと、やらなければならないことはまだまだたくさんある。
 2口目以降は、終身年金のA型・B型のほか、確定年金のT型・U型・V型・W型・X型があり、あわせて7つも型がある。そこから自由に選んでよいとのことだが、どう選べばよいのかさらに悩ましい。
 まず、月々の掛金をいくらにしようか。妻の修習同期は限度額(月額6万8000円)めいっぱい掛けているらしい。うちはそんなに収入は多くないから、そんな額は払えない。たくさん掛ければたくさん年金がもらえるが、今自由に使えるお金もそれなりにとっておきたいところ。「一度で(といわず何度でも)いいからハワイに連れて行って欲しい」との妻・娘たちからプレッシャーも強い。老後に備えての積立以外の積立も必要だ。
 掛金の月額を決めた後は、終身年金と確定年金とをどう組み合わせようか。長く年金をもらおうと思えば、掛金が高くなるので、加入口数を少なくせざるをえない。月々の年金額を多くしたいとなると、加入口数を増やす必要があるが、そうなると掛金の安い受給期間が短いものとなる。健康にまだ自信があるとはいっても、80歳まで生きる自信はない。妻は90歳まで生きるつもりだと言っているが、私自身は80歳まで生きられれば十分だと思う。そうすると全部終身年金でなくてもよいか。元気なうちに多くもらっておいた方がよいか。早めに(60歳から)もらって少し楽をしたい気もするが、65歳までは何とか働けそうな気もする。ただ、60歳を超えてから今と同じような仕事ができるのだろうか。
 年金だけで暮らしていくのは難しい。住宅ローンもまだ30年以上ある。今後教育ローンも負わされるかもしれない。年金では足りない分はどうするか。頑張って働き続けて補うしかないか。この仕事は生涯続けられるとはいっても、できれば穏やかな老後を過ごしたい。子どもが出来てから行っていない妻と二人での旅行にも行かねば。やはり娘たちには早く自立してもらって、楽をさせてもらおう。
 いろいろ考えて、悩みに悩んで、これだと思うものに決めた。あとで増減口も出来るらしい。余力が出来たら増口すればよいし、やっぱり厳しいということになれば、減口すればよい。

3 人生設計を考える機会
 先々のことを考えて自から進んで国民年金基金に加入したわけではないが、どのように加入するかを考えるうちに、図らずも今後の自分のあり方を考えるいい機会となった。
 人生設計をあまり考えていないという方がいれば、国民年金基金への加入を勧めたい。今後の人生設計を考えるいい機会となるはずだ。

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陽だまり 2016 No44より